TOP2015年04月新幹線と蕎麦 立ち食いも進化する?

 3月14日、北陸新幹線が金沢まで開通した。長野駅は新しい駅ビルMIDORIがオープンし、にぎわっている。駅ビルにはそば屋がいくつか入り、味の競争もあるようだ。有名な2軒のそば屋の今後の様子が興味をひく...。

 それとは別に、少し奇妙な体験を「駅の蕎麦」で味わった。

 2月末の昼、JR黒姫駅を訪れた時に、駅舎の外で丼をかき込む人を見かけた。あれは何だろう、と気になった。すぐ近くの観光案内所で聞くと、実は北陸新幹線延伸で、長野駅以北のJR信越線が廃止され、しなの鉄道・北しなの線に変わる、それで駅の立ち食い蕎麦も今日で閉店になる、という。そんなそば屋があるのは知らなかった。いつも車で行くので、駅は外から見るだけ、そば屋があるとは気づかなかった。地元の人に親しまれてきて、お知らせがあったので、閉店を惜しんで皆さんが食べに来ている、とのこと。評判が良かったのだそうな。

 その日、たまたま別なそば屋で1枚食べたあと、思い出して黒姫駅にまた行ってみた。立ち食いの人はまだいる。私も短い行列に並んだ。券売機で「(上)月見そば」370円を買う。待つ間見ていたら、隣のキオスクの店が閉じるらしく、商品の撤去を進めていた。鉄道の駅の経営者交代は、こうやって進むのか、と興味深かった。

 出来てきた蕎麦は、割と美味しい。麺自体が、従来の機械打ちのものと比べて、格段にいいのだ。なめらかな口ざわり、適度な噛み心地、弱いけれど蕎麦らしい風味...。ツユが塩甘で、飲みやすい。待ちながら食べながら、調理する女性と客の会話を聞いて楽しんだ。皆さん常連らしく、惜しむ声が多い。

 後で考えた。麺、ツユ、だけで旨い不味いは決められないな、と。手打ちであれ機械打ちであれ、しょせんは作る人、調理する人、経営者、という、「人」によって味が大きく変わるのかしら、と。

 黒姫=信濃町は、昔から「霧下そば」とも呼ばれる優秀なソバ産地。いくつものそば屋があって味を競いあう。それでも、特別に美味しいと言われるそば屋は多くはなく、有名な割にそば好きが集まるという話はあまり聞かない。安い立ち食い蕎麦に軍配が上がるような、そんな手打ち蕎麦では困るというもの...。

     ☆

 長野駅ビルは、金沢延伸の直前にオープンした。さっそく蕎麦を食べに行ってみた。食堂街に大きなそば屋が2軒並んでいるのが不思議だった。こうやって競争させるのが駅ビル側のねらいなのか。それともいくつもの同業者が集まることで相乗効果をねらったのか。長野県内では珍しい試み、とも言えよう。

 2軒並んだそば屋の味や評判については、機会があればまた触れるとして。別に改札口近くに立ち食いのそば屋が出来ていた。オープン特別期間なのか、メニューが4種類だけ、というのにはびっくり。場所柄、客は多いようだった。味は駅ホームの立ち食いと同じくらいか、と感じた。

     ☆

 たまたま奥信濃へ出かける用事があり、面白そうだったので、延伸された北陸新幹線の飯山駅を訪れた。わかりにくい無料駐車場から駅舎に。菜の花など飾りつけられていて華やかだった。

 観光案内所でそば屋のリストを、と聞くと、まだ作ってないという。そういえば駅前にはスーパーマーケットが出来るようだが、工事は始まったばかりらしい。全体に未完成の印象だった。それでも新しい駅へ見物人は多く、地元の人の関心が高いことがわかる。案内所では、すぐ隣の立ち食い蕎麦が評判がいい、と教えてくれた。

 それじゃあ、と寄ってみた。かなりの人が集まっている。券売機で「(特上)かけそば」300円を買う。狭い場所にワヤワヤと待つ人がひしめく。やや時間がかかって出来てきた。蕎麦はなかなか旨い。先日黒姫駅で食べたのとほぼ同じ味だった。ふーむ。どうやら「特上」は生麺からゆでるので時間がかかるらしかった。黒姫でも似ているが、慣れた地元の人は、普通の麺を食べるらしい。今度はそっちにしてみるか、と思った。

 この後、市内の2つの手打ち蕎麦の店へハシゴいた。どれも割といい味を出していた。しかし奇妙なことに、最初の安い立ち食い蕎麦がいちばん美味しい、と思った。何がそうなのかがよくわからない。これも恐らく、提供する経営者、調理する店員の「人」にかかっているような気がした。しょせんは「人」によって美味しさも決まってくるのか、と。

     ☆

 最近、立ち食い、あるいはセルフサービスのそば屋が、県下各地にいくつも出来てきた。大きなチェーン店では、自家製麺をうたう。それも関係あるのか、かなり旨い店もある。値段が高くて旨いのは当たり前、安くて旨いのが多くなるとありがたい。

 中には「上」とか「特上」と称して生麺からゆでる方式の店が増えたように見える。東京・関東では以前から生麺指向が強くなっていた。それが長野県にも普及してきたのかしらん。製麺機械の進歩があり、また一段と技術が上がってきているのだろう。

 気がついたら、手打ちと称して機械を相当に取り込んだ店が増えているようである。仕上がりの姿・形という見た目だけでなく、味わいまで手打ちと機械打ちの差が縮まってきたように思う。手打ちだから旨い、と威張ってばかりもいられない時代になってきたのかもしれない...。

2015年4月 5日掲載

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