TOP2015年09月ソバ花めぐり(1) 戸隠・黒姫はみごとに咲いて

 9月に入り、天気の良い日をねらって県内のソバの花を見て歩いた。あまり広範囲にはまわれなかったが、主な有名産地を駆け足でめぐってみた。

 全体の印象では―

 今年はソバ栽培の面積が、かなり増えたように感じた。部分的に減ったらしい地域も見えたが、意外に健闘している農村が多くなったような気がした。

 ソバの出来は、花の状態からは、割と順調に見えた。木(茎)の育ちのいいのが目立ったが、これは天候に関係があるのか。夏の暑さと乾燥、特に種蒔き時期の7月後半から8月中旬までの、が良かったのだろう。さらに8月後半の雨が充分に水分を提供したに違いない、と読んだのだが。

     ☆

 9月4日、名門の戸隠(長野市)の農村地帯に。何カ所かまわって、栽培面積はかなり増えたような印象を持った。

 栄峰(えいほう)という開拓地は広い畑がうねって続くのだが、飯綱山、また戸隠山を背景に、広いソバ畑が展開していて、毎年訪れても気分が晴れる一帯だ。このあたりも、そろそろ獣害が叫ばれるようで、トウモロコシなど、電気柵に囲まれた畑が目立つ。その隣の真っ白なソバの花は、柵にかこまれていなかった。まだ作物によって被害の差があるのだろう...。大きな畑の脇の、いつもよくミツバチの羽音を聞く一帯で、わずかにミツバチの姿を見ただけだった。全体に昆虫は少なかった。開拓集落の伝統があるのかどうかわからないが、広大なソバ畑を毎年見ていると、この地は契約栽培が多いのかなあ、と感じた。作り方が家庭用・自家用とはどこか違うように見える。

 東原の集落の周辺は、今年はすごくソバ畑が多かった。家の周囲の畑、また隣接する一帯にもソバがたくさん栽培されている。自家用も多いのか、若い茎が目立つ。葉タバコの収穫がほぼ終わったらしい畑を見かけた。そういえば、戸隠は以前は、麻(大麻)栽培の後作(あとさく)に急いでソバを蒔く場合が多かったという。麻がタバコ栽培に変わってからも、その傾向はあったのかもしれない。残ったタバコの木の脇に、幼いソバが伸び出していた。

 尾上(おかみ)では、戸隠山をバックに、構図のよい写真がとれる、絶好の撮影ポイントだ。ソバの栽培は以前と同じで心強い。昔と違うのは、ソバの中に少し雑草が生えていること。今はどこでも見かける光景だ。花は満開、たぶん稔りは良いと感じた。「とうろう」の赤い色は少なかった。

 諸沢(もろざわ)で。ソバ栽培が昔から多かった、最近も同じように続く。沢に挟まれた平たい一帯で、早くから沢に続く畑に電気柵を設けていた。今年は一段と厳重な柵が目立つ。畑作地帯の端の方で、野生の猿が数匹、道路を横切る姿を見かけた。後で村人に聞くと、熊や猪の被害が出ていると教わった。山の深さを実感する。ソバは花盛りで、今年は早いものと遅いものとのチグハグが少なかった。つまりは、タネを蒔いてからの芽出しが順調だったのだろう、と推理した。

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 とうろう(灯篭)とは、ちょうちん(提灯)などとも呼び、花が受粉して青い実が出来る、それが稔っていく途中(登熟期)で、たまに赤い色が出ることがある。これを「灯篭がついた」と言ったりする。灯篭が多くつくと、ソバの実(玄ソバ)は充実している、と言われる。長野県の認定品種であるタチアカネは、ほとんどの実が登熟期に赤くなるので、赤と緑の対比が強烈なみごとな光景になる。

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 戸隠の隣の信濃町も、優良なソバが出来ることで昔から有名。栽培の伝統もしっかりしている。

 黒姫山麓の開拓地で。いつも行く畑が満開になっていた。防護柵は新品か、しっかり囲ってあった。山に続く一帯で、獣害が心配なのだろう。ソバは結実にはいくらか早かったか、というところ。全体の姿は立派で、花自体はよく咲いていた。灯篭は少なかった。黒姫山が雲に覆われていて見えない、「黒い山」が名前の通りで、この時期に時折見かける姿だ。

 斑尾山や野尻湖も見渡せる畑のソバも健在。こちらもいくらか最盛期より早かったか。灯篭は少ない。どことなく、ここでも大規模栽培が定着しているなあ、と感じた。隣接する大根畑では、いつもより成長が幼い感じだった。ソバとは栽培のリズムが違ってきたのかどうか。

 飯山へ抜ける道のあちこちで。一部ではソバ畑が多かった。部分的には減ったと思った場所も見かけた。水田転作が目立つ。どこでも姿はかなりしっかりしていた、日陰の田畑も成長がよかった。その点は去年とは大きく違っていると見えたのだが。奥の方の斜面の畑では、灯篭のつきもよく、豊作型のソバがうれしかった。山ぎわの一部では、電気柵が長く伸びていて、山村の厳しさも感じた。

2015年9月18日掲載

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