TOP2015年10月ソバ花めぐり(5) 今年の出来は...

 9月に、かなり急ぎ足で県内のソバ畑をめぐってみた。遅くなりましたが、その全体的な感想のいくつかを残しておきます。

 県内のソバの栽培面積は、全般に増えてきたような印象である。通りがかりの幹線道路沿いで、また山間部の小さい畑でも、ハッとする白い花を見かけた。中でも水田転作が目立ち、機械化が進んでいるらしいのを実感した。

 一方で、山村の傾斜地の栽培は、逆に減る傾向かしら、とも思った。傾斜地かどうか、水田転作か。味はどうなるか。耕地の広さと機械化の状態は。などと気になるが、実態はよくわからない。各市町村の栽培面積は、年末か年明けには発表されるはず。

 田畑の状況では、山村では獣害が一段と厳しくなったようで、新しい電気柵が目立った。今年は山の木の実が豊作らしく、熊などはあまり里には出てこないらしかったが。

 ソバ畑の中の雑草が目についた。ソバばかりでなく、水田でも畑でも多かった。以前より増えた印象で、農村部での人手不足を感じさせる。

     ☆

 ソバの木(幹、枝)の育ちは、平均して良かったという印象である。しっかり育ち、姿が大きい、あまり倒れていない、と豊作型に見えた。栽培の時期が少し前倒しになっている傾向だが、天候のめぐりあわせがよかったのだろうか。

 そして花の咲き具合は、どこもよかった。地元の人に聞くと、簡単な感想では、今のところいいようです、との返答が多かった。これで、最後の稔り、収穫作業が順調にいけば、量も質も期待できそうだ...。

     ☆

 ソバの新品種が定着してきたよう。

 「タチアカネ」とか「信州ひすいそば」といった、県の試験場で開発された新品種が、ようやく普及し始めたか、と感じた。「ひすいそば」などは、栽培原価が高いせいか、粉の価格は少し高かった。粉だけでも流通するのかどうか、不透明さも残る...。

 新品種の場合,栽培の適否、玄ソバや粉の性格、手打ちにした仕上げの段階、と、それぞれにまだ課題があるような気がする。それでも、品種名がそば屋のメニューにも多く登場するようになった。今秋から来年にかけて、いっそう美味しい蕎麦が食べられることを期待しよう。

 なお、偶然見かけた試験栽培地では、さらなる新品種の開発や研究が行われているようだった。今後も注視していきたい。

 まだ少数派だろうが、長和町の「ダッタンそば」が本格的な栽培と販売が始まっている。特性を生かした味やメニューの開発が急がれる・

 また、「在来種」と呼ばれる、山村に残った古い品種も、活躍出来る場がもっと広がると面白い。生産性が低いなどと農家からは敬遠されているようだが、特有の味わいもあって、熱心なファンがいるらしい。付加価値を上手につけて販売出来ると面白いと思う。

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 虫たちが変だった。

 今年はどこのソバ畑でも、ミツバチの羽音がぐんと少ないのが気になった。気をつけて見ていると、わずかにミツバチとマルハナバチらしい姿が見えることもあった。まったく見えない畑も多かった。

 代わりというのも変だが、小型のスズメバチらしい蜂を見かけた。黄色い姿が鮮やかで、数がうんと多いわけではないが、よく目立つ。このスズメバチを観察していると、夢中になって花の蜜を吸っているように見えた。花から花へ忙しそうに飛び回る。受粉の大いなる助っ人に見えないこともない。それでも、農家の誰かが言っていた、ミツバチはスズメバチに食われてしまったのではないか、と。

 ネオニコチノイドという系統の農薬のせいでミツバチが激減したとヨーロッパなどでは報告されて、使用禁止あるいは制限がなされているという。日本では逆に、規制がゆるめられて、水田の害虫対策にネオニコチノイド系の農薬が増えているのだとも聞く。農業の現場では、微妙な駆け引きが行われているのだろうか。

 安曇野の松川村のソバ畑で見かけた赤トンボの群れは、上伊那郡飯島町の畑でも見かけた。こちらは中央アルプスの高山から降りてきたのだろうか。広い大地では、人間の営みよりもスケールが大きく、自然は元気なのかもしれなかった...。

 それでも、全体に赤トンボの姿は少なかった。最近の新聞報道でも伝えられた。虫たちの異変は、広範囲に、深刻に進行しているような心配も抱いた...。

     ☆

 いくつかの地区のソバの花の満開ぶりを見ていて、今年特に感心したのは、香りである。少し粘っこい、クセのある臭いが、風に乗って、時にムワーッとただよってくる。田畑で風下の時に強く感じた。これがソバ特有の香りであり、まとめればソバ蜂蜜の濃縮した味につながる。それがこんなに濃く匂う、それも多くの地域で、というのは初めての経験だった。雨上がりの午前中が特に強いのかしら、と思った。

 ミツバチなど昆虫が減って、受粉する機会が減った、なかなか受粉しない、それで花が虫をしつこく呼び寄せるために特に香りをたくさん放出しているのかしら、と推理してみたのだが。

     ☆

 名所で、また町場では、9月上旬から、早めの「新そば」を売りものにした店が、かなり目立った。たまたまそういう新そばにぶつかって、いくつか美味しい店もあった。どことなく、全体に今年の蕎麦は美味しいのかしら、と期待してしまう。

 ソバの出来は、10月10日~12日の松本そば祭りで聞いた話では、ソバの圧倒的な量を産出する北海道は、割といいらしい。大雨被害もあまり大きくなかったとか。

 関東の大水害におそわれた茨城県や栃木県は、ソバの大産地である北部は被害が少なかったのだという。

 もっとも、これらは、刈り取り前の情報だ。信州での様子は、これも早めの推測だが、花の割には稔りが少ないと見ている業者もあった。そろそろ収穫が本格化する、その収量と味がどうなのかは、たいへん気になるが...。

 これから本格的な新そばのシーズンになる、存分に楽しみたい。

                (ソバ花めぐり 了)

2015年10月26日掲載

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