TOP2018年12月今年の新そばは...味はいいが量は少ないか

 この秋、主に信州北部のあちこちのそば祭りなどをいくつか食べ歩いてみて、今年の信州の新そばの傾向が、少しわかってきた。

 地元で収穫された(らしい)ソバ粉を使った店では、かなり味がいい店が多かった。それとなく聞いて見ると、地元ではかなり自信を持って、「おいしいですよ」と返ってくる。それで収穫量の方を聞くと、全体には、かなり少ない、と渋々返事してくれる...。

 それより先、心配されていた北海道の様子は...8月には既に、大雨や台風の影響で、作柄はよくない、と地元紙が報じていた。その後、大きな地震もあり、状況は悪くなっていたことと思う。11月になってようやく新聞紙上に紹介された。すなわち、北海道産のソバ粉が今秋は、かなりの不作で、例年の4割高で取引されている、という。じっさい、月ごとの価格表を見ていると、2018年ものの北海道産は、グンと高い値段がついていた。

 信州の場合、「新そば祭り」などとうたっていれば、どうしても地元産の質のいいものを使うことが多くなるのだろう。かなり美味しい蕎麦を提供するイベントが目立った。

 印象的だったのは、恒例の11月19日の一茶忌。小林一茶の生まれ故郷柏原、今は信濃町だが、しなの鉄道の黒姫駅のすぐ近く、一茶会館のある場所が会場だ。法要や俳句大会があるのだが、私はいつも、蕎麦を食べるだけの参加である。今年も「ざるそば」「かけそば」が、それぞれ500円。毎年、長野のえびす講や一茶忌のころともなれば、初雪からスキー場の積雪が目立つのだが、今年は寒さの到来が遅れて、雪の気配も見えず、ひどい寒さではなかった、それもあって冷たいざるそばを食べた。期待していた通り、今年もグンと美味しい蕎麦だった。

 一茶忌の蕎麦は、いくつか変転があった。伝統の「十割そば」が名物で、年により旨い不味いの波があった。実質的に主宰する地元住民の力が入っている時は、とてもおいしい時があったし、メンバーが交替したばかりの時には少し味が落ちる傾向だった。近年は総じて旨い方なのだが、今年もなかなか美味しかった。受付で聞くと、やはり収量は少なかったという。不作の年の方が新そばの味がいい、というウワサは本当だったのだろうか。

 何カ所かで、同じような話を聞いた。ソバの収穫は少ないが、味はいいですよ、と。今年の信州そばの特徴だと言っていいだろう。

 こうした事情を反映してか、町場のそば屋の新そばは、必ずしも地元産でないだろうな、という味も目立った。聞くと、北海道産です、と答える店もいくつかあった。いかにも北海道産らしい、少しあっさりした味わいで、それとなくわかる場合もあった。かなりいい味のそば屋では、粉屋に任せているので、と応じる内儀さんも居た。

 もう一つ気になったのは、夏の蕎麦の味が、極端に不味くなった印象が無かったのが今年の特徴かしら、と思っていた。新そばが出まわってきて、日ごろから不味い店はともかく、平均すると、相当に蕎麦のレベルが上がってきたのかしら、と感じる店が多かった。今だけの季節の変わり目だから、なのだろうか。

 逆に、もしかしたら、と私がにらんでいるのは、輸入する外国産の玄ソバ、あるいは「むきみ」(ぬきみ、そば米)の品質が、かなり上昇したのかもしれない、という点。中国やアメリカの農家の栽培技術の普及、指導する日本の関係者、輸送や加工にも関わる商社の努力、粉屋の技術の向上などが積み上がって、質のよいソバ粉が出まわるようになったのかもしれない...。

 今後のことはわからないが、しばらくは―来年の2月、3月ころまでは、新そばの勢いが続いていて、おいしい蕎麦が食べられるだろうな、と期待しているのだが。

2018年12月11日掲載

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