目でつづるALSの日常(小松恵永)コラム「硬面軟面」
「かきたいというのはたぶんむかしからあったんですよ」
視線の先にあるカーソル(矢印)が次々と文字を選んでいく。文章の終わりに変換キーを選択。「書きたいというのは多分昔からあったんですよ」。ひらがなが漢字に変換された。
11月中旬、宮坂恒太朗さん(44)の諏訪市の自宅を訪ね、書くことへの思いを尋ねると、パソコンの画面上でそう答えてくれた。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の宮坂さんが信濃毎日新聞の諏訪版で連載するコラム「くもりのち晴れ」がこのほど30回を超えた。2020年4月から1年間の「土曜トーク」名のコラムも含めると40回以上。いずれも月1回の掲載で、積み重ねてきた回数に本人も改めて驚いている。
ALSは全身の筋肉が徐々に萎縮していく難病。宮坂さんは2011年7月に認定を受けた。徐々に体を動かせなくなり、21年10月には気管切開手術を受けた。誤嚥(ごえん)防止や頻繁なたん吸引の負担軽減が目的だが、代わりに声を失った。
24時間態勢の訪問看護や介護を受けてベッド上で過ごすが、意識は明晰(めいせき)だ。目を動かすこともできる。パソコンの視線入力装置が主な意思伝達手段とな