考ともに 軍事への科学の動員 独立と自治、立て直さねば
科学研究を軍事に引き込む動きが一段とせり出してきた。その一方で、国家の介入に対抗して学問の自由を確保する枠組みは揺らいでいる。研究者たちの足元がぐらつき、抵抗する力をそがれていることが何よりも気がかりだ。
経済安全保障推進法がこの国会で成立した。柱の一つが、先端技術開発の官民協力である。人工知能(AI)、量子、宇宙などの分野で、政府が重要視する技術の研究開発を資金面で支援する。
個別のプロジェクトごとに、政府関係者らと研究者による協議会を設け、機微情報も共有するという。研究者は守秘義務を課され、研究成果の取り扱いも制約を受ける。国の監視や統制が研究の場に及ぶ恐れがある。
岸田文雄首相は先月の日米首脳会談で、ロシアや中国、北朝鮮の動向を踏まえ、防衛力を抜本的に強化すると表明した。自民党は、国家安全保障戦略や防衛計画大綱の改定に向けた提言で、産業界と学術界の力を大胆に活用して民生先端技術を防衛分野に取り込むことを求めている。
戦争への不安の高まりに乗じるように軍事力の強化が叫ばれ、政府が軍事重視に傾く状況は、歯止めのない科学の動員に結びつく危うさを…