政治経済、スポーツ、日々の食卓など。多才な筆者6人が、多彩な話題を多様な視点で論じます。
沈黙を破る。「Breaking Silence」。このフレーズに魅了されたのは40年以上前。わたしたちの周囲には、時にわたしたち自身の内側にも、沈黙という分厚い壁があり、表現する言葉を奪っていた。 そんな時、海の向こうから、女性たちの背中を押してくれるような確かな言葉が波のように押し寄せてきた。…
私たちはその時点での基幹産業をモデルにして現実を表象するという仮説の続き。農業が基幹産業だった時代に私たちは人間の営みを農耕に喩(たと)えていた。種子を蒔(ま)き、水をやると、自然のはからいによって植物は育つ。収穫期を迎えたら、それを「天からの恵み」としてありがたく頂く。そういうモデルで人間たちは…
すでにお伝えしたように、9月中旬、信濃の3カ所で講演した。この間、昼はさまざまな場所で少しずつ違う蕎麦(そば)を食べることができて幸運だった。私は蕎麦が大好きなのだ。 松本に泊まった。朝は松本城まで往復し、夜は友人たちとワインを傾けた。次の日は信濃毎日新聞松本本社ビル「信毎メディアガーデン」の中…
イランによるホルムズ海峡の封鎖で「チョークポイント」という言葉が注目されるようになった。日本語では「戦略的急所」とでも言えばよいか。チョークポイントを押さえる効果が大きくなる背景には国際経済と政治、安全保障が密接に絡み合う相互依存性の拡大がある。つまり、グローバル化による相互依存性の広がりが、より…
ネパールと中国の国境付近で8月26日、土石流と洪水が未曽有の被害をもたらした。1500人近くの死亡が確認され、行方不明者は6千人以上。ネパール政府によると、被災者は8万人を超える。当初は地震による氷河崩壊が原因とされた。 気象科学者の国際チーム「ワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)」…
厚生労働省が8月28日に、今季のインフルエンザの流行入りを発表したことは注目を集めた。感染症法施行の1999年以降、前年から流行が続いた2023年を除くと2番目に早く、長野県も9月2日に県内の流行期入りを発表した。 日本では「インフルエンザの流行は空気が乾燥し、気温が低くなる冬」という認識がある…
毎週月曜の朝は、白湯(さゆ)を飲むだけで家を出る。味覚を駆使する仕事が、東京・吉祥寺で主宰する「クレヨンハウス」で待っている。その週のランチと夕食の味見である。調味料も食材も有機のもので、安全性と味には自信があるが、料理は作る者の心意気とセンス、むろん実力に左右される。そのための味見である。 W…
JAおきなわのお招きで講演をしてきた。JAからの講演依頼が多い。それは前に「農業をもう一度基幹産業に」という文章を書いたせいだと思う。「基幹産業に」というのは、別に農業中心に産業構造を再編しろという意味ではない。社会システムを考察する時には「農耕社会モデル」を基準にした方が大きな間違いをしないで済…
政治とは何か。社会に対する価値の権威的配分だと定義したのは、米国の政治学者D・イーストン氏だ。これほどシンプルで政治の本質を突いた定義はない。 国民の税金から成り立つ国の予算は、価値の権威的配分の最たるものであるが、配分の適正性や公正性、公平性は、正当な手続きや権限に基づいていなければならない。…
北海道日高町の私設サクラソウ保護区で秋の植生管理に勤(いそ)しんでいる。敷地は競走馬を育てる牧場に囲まれている。隣の広大な牧場を近景、日高の山並みを遠景に眺めながら一休みしようと、牧場を隔てる柵の手前にコンテナを重ねてテーブルをつくり、それに向かって座った。 コーヒーを飲んでいると、数頭のウマが…
東京で挫折した男が幼い子ども2人を連れ、郷里・北海道富良野市の原野に移住。厳しい自然の中で貧しくとも楽しく暮らし、時には衝突して絆を深め、互いに成長していく…。脚本家の倉本聰氏の代表作として知られるテレビドラマ「北の国から」は1981(昭和56)年から2002年まで、スペシャル編を含めて放映された…
明日という言葉はそのまま、「約束」という概念と、いまのわたしの中では直結している気がしてならない。どうしてなのか。理由は…。 あれもこれもそれも。このところ、返事ができていないことが多々思い当たる。いわゆる原稿の依頼なら、すぐに答えはでる。自分のスケジュールを考えればわかる。できるか、無理なのか…
日本笑い学会で講演をしてきた。演題は「人文知としての笑い」。「遠く離れた二つのものが思いがけないきっかけで一つになった時に人間は強烈な全能感と解放感を経験する」という仮説に基づいて、知性と笑いについて語ってみることにした。 当日の朝、合気道の稽古指導の中で「斬り」の術理を説明していた。右手は手の…
熊本の「母親大会」で講演をした。震災後の現状が気になったが、熊本市内は熊本城の一部が大規模修理で近づけないことを除けば、平穏に見えた。しかし八代市ではまだ、井戸水が枯れたり濁ったりしているという。農家などで働いている技能実習生たちの生活も、元には戻っていないようだ。 熊本の「平和を求め軍拡を許さ…
終活と言えば、「始末」や「義務」の側面が強調されがちである。具体的には身の回りの整理、断捨離、遺品整理の事前準備、遺言書の作成、葬儀や墓の準備、資産の相続対策、さらには医療・介護の選択など、さまざまな他者への配慮が優先されているように思える。 この世から去るギリギリまで、他人に迷惑をかけない配慮…