長野県を離れてインターできるけど…人は減った 全国が注目、岐阜県になった地域の今
〈平成の大合併 20年の轍(わだち)〉
■中津川市に編入合併、旧山口村
木曽郡山口村(当時)が県をまたぎ、長野県から岐阜県中津川市に編入合併して13日で20年となった。「平成の大合併」で、全国でただ一例として注目された越県合併の舞台。旧中山道の木曽11宿の最南・馬籠(まごめ)宿を擁し、生活圏は岐阜側に向いた旧村で、当時の決断に関わった人々の声を聞いた。
(奈良つとむ)
■スマートIC開業に膨らむ期待
晴れ間が広がった13日、中津川市神坂(みさか)の中央道神坂パーキングエリア(PA)からは雄大な恵那山(2191メートル)が望めた。PAでは、市などが今秋の開業を目指すスマートインターチェンジ(SIC)の工事が進む。「木曽路にインターができる」。旧山口村にある馬籠宿の観光関係者らが待望する。馬籠宿とPAは1キロほどの近さながら、中津川インターから国道19号などを経由する必要があった。所要時間は数分と大幅に短縮され、木曽路観光や住民の利便性向上へ期待が膨らむ。
■「便利になった」
SIC設置は、旧山口村を含む木曽郡の町村や岐阜県側市町村が求め、2005年の新中津川市発足に伴う新市建設計画に盛り込まれた。合併自治体が活用でき「有利な借金」とされる合併特例債も活用し、市と中日本高速道路が整備する。旧村域では、地域を縦断する農道(通称ふるさと椿街道)も完成した。
旧村の住民は元々、通勤や通学、通院で中津川市街地に行く人が多かった。合併で運転免許証更新の即日交付は市内でできるようになり、中南信運転免許センター(塩尻市)まで片道1時間半以上かけて往復する必要がなくなるなど「岐阜県入りで便利になった」との見方は少なくない。
■住民の声は届いている?
そうした中、山口村最後の村長を務め、合併後の新中津川市でも市議を2期6年余務めた加藤出(いずる)さん(87)はこの20年間の地域のありようについて「立ち止まって検証が必要な時期だ」とする。
主に財政的な見通しの厳しさから合併の必要性を感じ、村民意向調査などを踏まえ中津川市との合併を推進した。ハード整備面で利点があったと考える一方、山口総合事務所の正規職員数は役場時代の約40人から5人まで減少。編入町村ごとに設置され、新市政に提言する地域審議会は11年に廃止された。「村時代と比べ住民の声が(市に)届いているだろうか」との思いを拭えない。
■人は減って、小学校も…
旧山口村域の人口は、合併直後の05年4月の2043人が24年同期に1545人と25%近く減った。地域の小中学校として唯一残った山口小学校(児童数41人)を巡っても昨年春、中津川市教委が小中学校などの適正規模を示した「配置計画」で、地域の意向は考慮する―との留保付きながら、29年ごろまでに「統合が望ましい」とされた。
1月、山口地区区長会長の宮下紀明さん(68)らは、市教委から同小の児童数推移の見通しや計画について説明を受けた。住民からは、小学校を存続させるべきとの声も、統合して児童数が多い環境の方が望ましいとの意見も届く。地域を左右するテーマとして「明確な理由を持って結論を出したい」と見据える。
■薄れる特色、見えない将来像
山口村議だった可知和人さん(75)は合併慎重派として加藤さんと村長選で争い、合併後は区長会長やまちづくり協議会長を歴任した。住民意向調査などで合併賛成が上回った当時の状況を「合併しなければ村は(財政的に)存続できない、それ一本だった」と記憶し、地域の将来像を巡る議論は合併前も後も「十分ではなかった」とする。
山口では、名物の五平餅を通じ地域文化を発信する「ふるさと馬籠ごへー祭り」も12年を最後に終了するなど特色は徐々に薄れゆく。「今は中津川市の一地域になった」と可知さん。それだけに、小学校の統合問題では住民に主体的に考え、議論してほしいと願う。「行政の方針だから仕方がない、ではなく、自分たちがどうしたいかだ」。越県合併の選択やそれからの20年に重ね、つぶやいた。
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県内は今年から来年にかけ、新自治体の発足、周辺町村の編入による市域拡大など「平成の大合併」から20年の節目を迎える地域が相次ぐ。国が財政措置を「アメ」に推し進めた合併は、行政経費の効率化や地域インフラの更新につながった半面、既に人口減少が深刻だった周辺部と中心部の格差を広げるなど負の側面も指摘される。「平成の大合併 20年の轍(わだち)」では、合併しなかった自治体を含め、当時の選択が地域の今にもたらしたものを見つめる。
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[平成の大合併]地方自治体の行財政基盤を強化して地方分権を進めるとして1999年4月から進められた市町村合併。合併特例債など財政支援を盛り込んだ旧合併特例法に基づきスタートし、新合併特例法の期限切れに伴い2010年3月に終了した。県内では03年9月に3市町が合併して発足した千曲市を皮切りに18件(12市、4町、2村)の合併が実現(越県合併の旧山口村を除く)。うち7割近い12市町村が05年に合併した。県内市町村数は大合併前の120(17市36町67村)から、77(19市23町35村)に再編された。
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