アフロの俺が俺で俺だ(69)もはや来世はないかも
家から駅まで必死のダッシュを試みたものの、直前の歩行者信号に引っかかり、万事急す。仕方なしにポケットからスマホを取り出し
「ごめん!10分くらい遅れそう!」
友人宛てに文面を打ち込み、送信のボタンをタップする、その直前
「すまん!20分遅れる!」
一瞬、早く友人からラインが届いた。
この時、読者の皆さんならばなんて返信するだろうか。
「ごめん!こちらも遅れてる!」
だとすれば、きっとあなたの徳は高く、来世も人間や、白鳥、あるいはイルカなどに生まれることが出来るかもしれません。
しかし、もしも
「はーい!りょーかーい!!」
だとすれば、あなたは少しだけ姑息な人間なのかもしれません。相手が自分よりも更に遅れるからと言って、自分の遅刻を無かったことにしてはならないのです。残念ながら来世はグリーンピースでしょう。
さて、斯く言う俺はなんと送ったかといいますと
「慌てなくていいから、気をつけて来てね」
でした。
はい、グリーンピースです。チャーハンの上で隣り合わせになったとしたら、前世の愚かな生きざまを共に悔やもう。いやむしろ、俺の場合は遅刻を隠すどころか「気をつけて来てね」という言葉で、寛容さまでも見せつけようとするあたり、もう有機物は無理かも知れない。多分、弁当の中の緑のギザギザのやつだ。おかずとおかずを隔離する為に立てかけられる姿を見て、容赦なく哀れんで欲しい。
ともあれ、相手を待たせずに済んだことは良かった。こうなれば予定通り10分遅れて到着し、遅れずに来てました、という顔で友人を待つのみ。弾む息を整えて、悠々と駅へ向かう。
しかし、10分遅れで待ちあわせのカフェに着くと、そこには驚くべき光景。
20分遅れる、と伝えてきてていた友人が既に席に座っているのだ。彼は
「出がけに急いでたらさ、家族が車で送ってくれたんだよー!」
と無邪気に笑いかけてくる。
「…な、なんだー!遅れるっていうから本屋で時間潰してた~」
笑顔を引き攣らせながら俺は言う。本当は本屋なんて寄っていない。自分の姑息さを隠蔽する為に、更にウソをついたのだ。なんだか、こう言ったこぢんまりとしたウソや狡さは、大きなウソよりも、人間性を説明する上で説得力を持っている気がする。
こんな人間には、もはや来世などないかも知れない。寒風吹く季節、啜るホットコーヒーはひと際苦く感じた。







