半世紀続けた店も亡き妻との思い出も火災で全て失った76歳 理容師として再び立ち上がれた原動力
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「人柄もいいし、切ってもらっている間の居心地もいい」。今月上旬、下伊那郡阿南町の金田伸子さん(66)宅。金田さんが話すと、隣の泰阜村から訪問理容に来ていた理容師佐藤広忠さん(76)が「理容師の資格があるだけ。お客さまに支えられている」と、照れくさそうに笑った。
半世紀以上の経験に裏打ちされた腕前。横髪をクリップで止めると、新調したはさみで手際良く襟足を整えた。訪問理容だけに大きな鏡こそないが、金田さんは「(自分の)思った通りになっているから大丈夫」と信頼し切った様子で話した。
■亡き妻との思い出も全て
阿南町出身の佐藤さんは10代後半の頃、名古屋市の理容店で住み込みで修業した。その後、帰郷。泰阜村のJR飯田線温田駅近くで約50年、理容店を営んだ。だが今年3月、火災で全てを失った。2018年にがんで亡くなった妻恵美子さんとかつて訪れた京都を訪ねようとしていた矢先だった。
早朝、2軒隣の木造住宅から出火し、燃え広がった。「火事だー」。大声と窓をたたく音が聞こえ、趣味のカメラなどを入れたバッグだけを持って寝間着のまま飛び出した。火は屋根を伝い、一気に店舗兼住宅を覆った。「もう駄目だ…」。逃げた温田駅前から、建物が燃える様子を見つめるしかなかった。
失ったのは・・・
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