〈社説〉大学と軍事研究 学問の府の責務手放すな
軍事目的の研究は行わない-。戦争に加担した反省を踏まえ、戦後、科学界が打ち立てた原則が根元から崩れようとしている。
防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」に応募する大学が急増し、今年度の採択件数の6割以上を占めた。軍事技術への応用が可能な基礎研究を公募し、支援する制度である。
今年度は全体で560件の応募があり、2015年度に制度を設けて以来、最多となった。大学は291件と昨年度の2倍以上に増えている。採択された47件のうち30件が大学だ。信州大を含め11校が初めて採択された。
信大は、研究成果が軍事目的に転用される恐れがあるとして応募を認めていなかったが、昨年11月に方針を転じた。今回、水素やメタンを常圧で貯蔵する研究をはじめ3件が採択されている。
応募にあたって、学内で厳格な審査を行ったとするものの、具体的な手続きは明らかでない。応募解禁を急いだ執行部は、反対する教員や学生の声にも向き合おうとしてこなかった。
国立大学は04年の法人化以降、国の交付金が減り、研究資金の不足にあえぐ。兵糧攻めにされた大学が軍事体制に組み込まれていく恐れが現実になっている。
戦後、国内の科学者を代表する機関として設立された日本学術会議は1950年の声明で〈戦争を目的とする研究には、今後絶対に従わない〉と宣言した。67年にも重ねて決議している。
装備庁の制度に関しては、2017年の声明で、軍事活用の目的が明確だとして強い懸念を示し、戦後2度の声明を継承すると明記した。そのことが、学術会議に対する政府、自民党のあからさまな圧力につながる。
国の機関として独立を保障されてきた組織が法人化され、むしろ政府が介入する余地が生まれた。軍事への動員に抵抗する足場は大きく揺らぎ、装備庁の制度に大学が応募する動きが広がった。
基礎研究の公募だけではない。より軍備に直結する研究にも大学の研究者が既に加わり始めているという。さらに、デュアルユース(軍民両用)を旗印に、先端技術の研究開発を推進する国策に研究者が引き込まれてもいる。
戦後の出発点となった「絶対に従わない決意」は過去の遺物と化してしまうのか。憲法は学問の自由を定め、大学の自治を保障している。大学自ら自治と自由を手放し、軍事体制を強める権力にからめ捕られてはならない。







