「ばーば」が忘れなかった大切な人 認知症になってから出会ったのに

会員記事
「ばーば」(左)と、孫のともろうさん=ともろうさん提供

【朝日新聞のデジタル版連載「いつも、どこかで」 2026年6月21日配信】

 ともろうさん(30)が「ばーば」の認知症を疑い始めたのは数年前。

 旅行のお土産として、健康祈願のダルマを持っていったときのことだった。

 孫からのプレゼントを喜んで仏壇に飾ったが、翌朝「このダルマは何?」と尋ねてきた。

 同じことを何回も聞いたり、同じものを何個も買ったり。

 病院で診てもらおうとしていた矢先、症状を急激に悪化させる出来事が起こった。

 ばーばの息子である伯父が、大動脈解離で緊急搬送されたのだ。

 伯父は体のあちこちに管をつながれ、意識が戻らないままだった。

 ばーばは、病室で伯父の手を握って泣いていた。

 だが、自宅に戻ると「なんで家にいないの?」と尋ねてきた。

 「受け止めきれない悲しみから、ばーばの脳がばーばを守ろうとしているんだ」

 ともろうさんは、そんな風に思った。

 息を引き取った伯父にすがって「私もすぐ死ぬ。すぐ行くからね」と泣くばーばを見て誓った。

 「伯父さんがいなくても『長生きしたい』と思わせなきゃいけない」

 仕事の合間を縫って、ばーばの家を訪ねるようになった。

 

■ばーばの故郷・鹿児島へ

 症状の悪化を遅らせるためにも、楽しい刺激がある毎日を過ごしてもらおう。

 そう考えて、一緒にパズルや間違い探しに挑戦したり、映画や旅行に行ったり。

 昨年は、ばーばの故郷である鹿児島へ行った。

 テレビで鹿児島の話題を見たばーばが「ずっと帰ってないね」と言ったのがきっかけだった。

 認知症になって以降、自信がなさそうな言動が増えたばーば。

 だが、自分の故郷に戻ったときは冗舌だった。

 泊まったホテルで地元特産のキビナゴ料理が出た時は、思い出話をしてくれた。

 かつての自宅近くの海岸へ行ったときは、息子がおぼれて漁師に助けられたときのことを教えてくれた。

 旅行に行ったことは忘れてしまうけれど、写真を見せて説明するたびに、泣いて喜んでくれる。

 認知症と診断されて2年以上が経つが、なんとか踏みとどまっているように感じる。

 

■ばーばが忘れない人

 そんなばーばが、認知症になってから知り合ったにもかかわらず、忘れない人がいる。

 ともろうさんにとって大切な

長野県の求人情報
スポンサー 求人ボックス