黒猫ケンちゃん、やっと美術館に入れたね 「盟友」警備員さんの手で
【朝日新聞のデジタル版連載「いつも、どこかで」 2026年7月12日配信】
尾道市立美術館(広島県)を一躍有名にした黒猫「ケンちゃん」と、茶トラの「ゴッちゃん」。
きっかけは2017年3月、近くのレストランで飼われていたケンちゃんが、美術館への侵入を試みたことだった。
警備員の馬屋原定雄さん(76)が、ケンちゃんを優しく制止。
その様子を収めた写真を美術館がSNSに投稿すると、10万近くの「いいね」が寄せられた。
その後も、年4回の特別展のときだけ警備に来る馬屋原さんと2匹は、攻防を繰り広げた。
19年には、地域猫だったゴッちゃんに新たな飼い主が見つかって「引退」。
以降、ケンちゃんと馬屋原さんの対決となったが、攻防ではなく「交流」に変わっていた。
ケンちゃんが美術館裏口で馬屋原さんの出勤を待ち伏せしたり、玄関でかくれんぼをしたり。
SNSで注目を集め続け、年間の来館者数は、なかなか破れなかった「3万人の壁」を突破し、7万人を超えたこともある。
■最後の攻防戦は
最後の攻防戦となったのが、24年4月18日。
春の特別展が後半にさしかかったころ、ケンちゃんが正面玄関の突破を試みた。
開館前の午前8時ごろにやってきて、自動ドアの前で寝転がっていたケンちゃん。
馬屋原さんが体をなでるとムクッと起き上がり、横をすり抜けるようにして館内へ。
馬屋原さんが足を使って通せんぼすると、さらに進もうとしたため両手で制止。
しばらくマットの上で横になった後、突然体を左右によじって振り切り、館内へと駆け出した。
館内に侵入したケンちゃんは、数メートル進んだところで自らストップ。
馬屋原さんにつかまった後、レストランへと連れていかれた。
この攻防からしばらくして、家から出ることが少なくなったケンちゃん。
自宅での病気療養を経て25年9月下旬、静かに息を引き取った。
■「ケンちゃんの願いをかなえよう」
「生前、一度も美術館に入れなかったケンちゃんの願いをかなえよう」
そんな思いで今年7月3日







