長野県の県鳥であり国の特別天然記念物でもある「ライチョウ」。その危機を自分ごととして捉え、信州の豊かな自然が残る未来をともにつくるために。ライチョウの今、これからを一緒に考えましょう。
<「雷の鳥」エピローグ 県鳥と信州のこれから> 5月上旬、木曽谷上空を飛ぶ旅客機の窓から風景を見渡した。眼下には中央アルプス。伊那谷を挟んで奥に南アルプスが連なる。反対側の窓からは御嶽山が見えた。北アルプスの乗鞍岳、穂高連峰も続いていた。ニホンライチョウが生息するのは現在、これらの山々と、新潟県の頸城山塊だけとなっている。 3000メートル級の山々の残雪は、おおむね亜高山帯のダケカンバ林から上に広がっていた。高山のみで命をつなぐライチョウの息づく範囲が、白く浮かび上がっているようにも見えた。 「雷の鳥」の取材ではさまざまな山を歩いた。ライチョウの生息地のうち、
<「雷の鳥」(29)保護増殖事業、次のステージへ> ■「飛来雌」はどこへ 4月25日、中央アルプスで今年も、ニホンライチョウの生息確認調査が始まった。環境省による保護増殖事業を指揮する中村浩志・信州大名誉教授(79)と調査員が、まだ雪深い山道を登っていく。気温は高く、雪を蹴り込むたびに汗がしたたるが、中村さんは歩みを緩めず、目当ての鳥を求めて進んだ。 中村さんが再会を強く願ったのは「飛来雌」だ。
<「雷の鳥」(28)問われる観察マナー> 中央アルプスのニホンライチョウは復活事業により、2020年の20羽から着実に数を増やし、25年は成鳥約190羽を確認するまでになった。稜線とその周辺は登山道を問わず所狭しと縄張りが広がる状態となり、新たな課題が浮かび上がっている。登山者がライチョウを観察する際のマナーだ。
<「雷の鳥」(27)山小屋「乗鞍白雲荘」支配人 小林正直さん> 「気配がありませんね」。5月14日、北アルプス乗鞍岳(3026メートル)。開山祭を翌日に控え、山小屋「乗鞍白雲荘」の小林正直支配人(46)が登山道整備の合間に、稜線を見渡して言った。ニホンライチョウが活発に動く曇天だが、鳴き声も聞こえない。現地に入った4月以降、姿を見ていないという。足跡を見つけ、少しだけ安堵した様子だった…
信州の山岳地帯で命をつなぐライチョウの姿と、そのすみよい環境が次の時代まで続くよう絶滅の危機にあらがう人々の軌跡を、カメラを通して見つめる大型写真企画「雷の鳥」。昨年12月から今年4月までに配信した中から、記事5本を紹介します。 ■お母さん雷鳥はどこへ...残されたひな 多くの捕食者がすむ北ア…
うららかな午後、青空に北アルプス立山連峰の残雪がまぶしく映える。4月14日、富山市内。動物園「富山市ファミリーパーク」の獣医師、秋葉由紀さん(46)は、民家の庭で切り落とされた…
大町市立大町山岳博物館で3月22日、春休み中の小学生向けに収蔵庫の見学会が開かれた。「ライチョウの剝製は85羽あって、巣や羽根、卵もあります」。学芸員の岡本真緒さん(27)の説明に、卵の標本を見た小学生は
北アルプス北部の白馬乗鞍岳(2436メートル)に程近いオオシラビソの樹林帯。3月中旬、雪の重みで垂れ下がったその枝葉の陰に
「グエー、ガガガガ」。暗闇から、雄のニホンライチョウが飛ぶ時の鳴き声が聞こえる。3月16日午前5時ごろ、中央アルプス千畳敷カールの北側斜面。伊那前岳(2883メートル)や和合山が連なる稜線直下の薄暗闇を複数の雄が飛び回っていた。 目の周りのサングラスをかけたような黒い線が雄の印だ。一緒に行動したり、小競り合いをしたり。辺りは次第にオレンジ色を帯び、空に広がる星が見えなくなる。雲海の先から陽光が差すと、雄たちの動きは落ち着きを見せた。
<「雷の鳥」(22)人間社会との交点> ※2026年3月9日付の特集紙面のデジタル版です。 ■ずんぐりした体につぶらな瞳「かわいい」 中央アルプスを代表する観光地で、登山の玄関口となる千畳敷。標高2612㍍に位置するロープウエー駅に併設されたホテル千畳敷の売店をのぞくと、あちこちにニホンライチョウの姿がある。
<「雷の鳥」(21)人間社会との交点> ※2026年2月23日付の特集紙面のデジタル版です。 ■保護色の例として教材に 日本では高山にすむライチョウがなぜ親しまれる鳥となったのか―。手がかりを探して岐阜県関市の岐阜県博物館を訪ねた。動植物や歴史、美術工芸などが展示される総合博物館だ。動物担当の学芸員、説田健一さん(59)の案内で第3収蔵室に入ると、並んだ棚に所狭しと鳥類の剝製が置かれていた。「こちらです」。扉付きの棚にライチョウの剝製があり、台座には学校名が記されていた。
<「雷の鳥」(20)驚異に向き合う> ※2026年2月16日付の特集紙面のデジタル版です。 ■声と動きで威嚇 「フォーオー、フォッフォッフォー」―。昨年8月15日、北アルプス燕岳(2763㍍)の山頂近く。環境調査会社ウィルアクト(長野市)の杉本淳さん(47)は登山道から外れた岩場で叫んだ。谷底からこだまが返ってくる大声。サルを追い払うためだ。「いなそうですね」と、双眼鏡を首にかけ直した。 ※2026年2月16日付の特集紙面のデジタル版です。 「フォーオー、フォッフォッフォー」―。昨年8月15日、北アルプス燕岳(2763㍍)の山頂近く。環境調査会社ウィルアクト(長野市)の杉本淳さん(47)は登山道から外れた岩場で叫んだ。谷底からこだまが返ってくる大声。サルを追い払うためだ。「いなそうですね」と、双眼鏡を首にかけ直した。
<「雷の鳥」(19)命をおびやかす者たち> ※2026年1月26日付の特集紙面のデジタル版です。 昨年9月2日未明、中央アルプス・西駒山荘の脇に設置したセンサーカメラがキツネの姿を捉えた。籠わなの前を通り過ぎ、ライチョウの〝ゆりかご〟であるハイマツ帯へと歩を進める。写真にはさびた空き缶も写っていた。山荘によると、かつてはごみのポイ捨てや埋め立てが当たり前だったのか、大雨などで地面が洗われると出てくるのだという。
<「雷の鳥」(18)命をおびやかす者たち> ※2026年1月12日付の特集紙面のデジタル版です。 ■シカの食害で失われる高山植物 昨年9月3~8日、昨年9月3~8日、南アルプス…
長野県の高山帯に多く生息しながらも、絶滅危惧1B類(近い将来に野生での絶滅の危険性が高い)に指定され、絶滅の危険度が高まっている国特別天然記念物のニホンライチョウ。大型写真企画「雷の鳥」では昨年8月から10月にかけて、絶滅を回避するために、栃木県那須町の動物園「那須どうぶつ王国」で人工繁殖させる様子を紹介しました。動物園で生まれ、中央アルプスへ放たれるまでの記事をまとめました。