著名な専門家や新進気鋭の論者が、政治や社会、経済が抱える矛盾や問題点を鋭く指摘する評論です。
若者のエネルギーが政治を動かしている。フランスでは高校生らが教育環境の改善を求めて立ち上がり、政府は教員増員などの対応を迫られた。若年層の人口比率が高い途上国、とりわけ南アジアでは、その勢いがさらに顕著だ。政策変更にとどまらず、既存の政治体制を揺るがす動きが相次いでいる。 スリランカでは2022…
重大な事件や不祥事を起こした人物や企業による会見や裁判での発言から、インターネット上での失言や不適切発言に至るまで、謝罪の適切さを巡る批判が目立つ。SNS(交流サイト)では、潔く非を認めて謝るように要求する声や、謝罪が謝罪になっていないと糾弾する声、謝罪だけでは済まないと辞職や社会的制裁を求める声…
9月の日米首脳会談でトランプ米大統領が高市早苗首相に「円安」への懸念を伝えた。首脳会談で為替問題が持ち出されるのも異例なら、それを首相から公表するのも珍しい。 かつて「円安で(外国為替資金特別会計の運用が)ホクホク」とも発言していた高市氏が、トランプ氏に同調して「一般論として円の過小評価は問題」…
8月13日、ロシアのプーチン大統領が択捉島を訪問した。ロシア大統領による北方領土訪問は、2010年に当時のメドベージェフ大統領が国後島を訪れたのが最初である。その後もミシュスチン首相を含む多くの政府要人が、まるで政権への忠誠を示す「踏み絵」のように北方領土への訪問を重ねてきた。日本政府は事前に繰り…
高市政権は、新政権発足後の支持率が上下に大きく振れる時期を乗り切り、それなりの支持率の水準を安定的に維持しているように見える。当初しばしば話題になった高市早苗首相の健康問題も、その詳細を知るすべもないが、今のところ大事にならずに済んでいるらしい。そしてこの秋からは、政権の命運を左右する重要な法案・…
近年の円安は日本経済の風景を変えてきた。4年前には1ドル=120円台だったが、この8月末までは160円前後で推移していた。円の対ドルでの価値は3割ほど落ちたことになる。外国人観光客や、海外で稼ぐ企業にとって恩恵は大きい。一方で輸入物価の上昇は、家計の生活を圧迫した。とりわけ食料品の値上がりは著しく…
「金(Money)か、庶民(Many)か」。11月に迫る米中間選挙は、共和党か民主党か、保守かリベラルかという従来の区分だけでは捉えられない。巨額の資金で政治への関与を買う少数者と、金権政治に怒り、庶民のための政治を取り戻そうとする多数者。そうした対立構図が鮮明になっている。 ■米国の金権政治 …
実体のない国際社会に主権国家並みの刑事裁判権を打ち立てる。この難しい企てを制度として結実させたのが、国際刑事裁判所(ICC)である。 ICCの「生みの親」の一人が、極東国際軍事裁判(東京裁判)のオランダ代表判事レーリンクだ。祖国で刑法・犯罪学を研究し、地方裁判所の判事を経験。国際法には不慣れだっ…
生成AI(人工知能)の普及により、私たちはかつてないほど容易に膨大な情報にアクセスできるようになった。知りたいことを質問するだけで、インターネット上にある情報が整理され、分かりやすく要約された形で答えが返ってくる。商品やサービスを比較する時も同様だ。ネット上の口コミをAIが読み込み、対話形式で質問…
インフレがひどく生活が苦しいので、飲食料品の消費税を1%に引き下げる政策で助かると思っている人は多い。しかし、代わりの財源がある減税と財源なき減税では雲泥の差があることに注意する必要がある。赤字国債に頼って減税を行っても、円の価値が下がる円安が起きて、輸入農水産物の価格が上昇し、せっかく減税しても…
世界各地でこの秋、注目度の高い選挙が続く。9月には北大西洋条約機構(NATO)加盟後初となるスウェーデンの総選挙、10月には主要新興国で構成するBRICSの一角をなすブラジルの総選挙がある。そして11月には米国で中間選挙が実施される。 どの国にとっても懸案となっているのが、人工知能(AI)を用い…
戦後81年の「8月15日」が近づいている。今年も例年と同じように「涙」や「悲しみ」を軸に追悼と慰霊が前面に出るのであろう。奇妙な言い方になるのだが、それは「8月ジャーナリズム」の儀式と化していると言ってもよいように思う。 私も追悼と慰霊の気持ちは誰にも負けない。戦死した肉親を思えば身を正したくな…
高市早苗政権は、食料品の消費税率を8%から1%へと引き下げ、1%分も給付金で国民に還元することを8月5日に閣議決定した。税率引き下げは、2027年4月から2年間にわたって実施する方針だ。この方針は、2月の衆院選で自民党が掲げた公約(食料品の消費税率を2年間ゼロにする)に沿ったものである。与野党を含…
東北新幹線の下り列車で一ノ関駅(岩手県一関市)を通過すると、間もなく左右の車窓に青々とした水田の風景が広がる。この広大な農地が、北上川の治水対策として整備された「一関遊水地」の普段の姿である。堤防工事の一部を残しているが、7月1日に本格運用を始めた。 北上川の両岸に広がる三つの遊水地で構成され、…
また、戦争報道が集中する「8月ジャーナリズム」の季節がやってきた。この夏、私は2005年の著書『八月十五日の神話』の国際版をケンブリッジ大学出版局から刊行するため、最終チェックに入っている。 グローバルヒストリーとして通用する戦争記憶のためには「9月ジャーナリズム」が望ましい、と繰り返し論じてき…