蓼科高原で味わうジビエ 「命を生かし切る」一皿 【地球の歩き方・信州版 茅野市】
アンティーク調の店内に家族連れの笑い声が響く。茅野市蓼科高原のフランス料理店「オーベルジュ・エスポワール」。鳥獣害に伴い注目を浴びるジビエ(野生鳥獣肉)料理だが、同店ではいち早く四半世紀前から提供を続ける。
「国産ジビエ堪能コース」(2万1千円、消費税・サービス料別)の一品目はイノシシ肉のミンチをスライス肉で巻き、ブドウの枝に差して焼いた「猪(いのしし)のブロシェット」。アナグマの脂身がうまみを加えるパテのパイ包みや信州野菜の盛り合わせが前菜に並ぶ。鹿やイノシシなどの骨をとことん煮出したスープはゼラチンたっぷり。メインディッシュは信州産の鹿肉を使った「鹿肉のポワレ」。口の中に弾力とともに風味が広がった。
オーナーシェフの藤木徳彦さん(52)は東京の高校卒業後、蓼科高原のオーベルジュ(宿泊施設付きレストラン)で働いた。修行中に訪れたフランスのオーベルジュ。家族経営のにぎやかな雰囲気で地元食材の料理をしっかりと説明する様子を見て「地産地消」に感銘を受けた。1998年、蓼科で店を開いた。
当初は地元産食材が手に入りづらかった。地元農家を回り、お茶をすすって打ち解け手に入れられ…